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新しく入社した従業員が、職場や仕事に慣れるまでには時間がかかります。
業務の進め方だけでなく、社内のルールや人間関係、会社独自の考え方など、入社後に覚えることは少なくありません。
こうした新入社員が組織になじみ、仕事で力を発揮できるように支援する取り組みとして注目されているのが「オンボーディング」です。
オンボーディングというと「入社時の研修」をイメージするかもしれませんが、研修だけを意味するものではありません。
入社前の準備から配属後のフォロー、上司や同僚との関係づくりなども含め、新しい従業員が組織に適応していくための継続的な支援として考えられています。
この記事では、オンボーディングの意味や目的、新入社員研修との違い、企業が取り組むメリット、具体的な進め方までわかりやすく解説します。
この記事でわかること
オンボーディングとは、新しく組織に加わった従業員が職場や業務に適応し、力を発揮できるように支援する取り組みです。
「on-board(乗り物に乗っている)」に由来する言葉で、新しいメンバーを組織という船や飛行機に迎え入れるようなイメージで使われています。
企業では、新卒社員だけでなく中途採用者など、新しく入社した従業員を対象として行われます。
たとえば、
など、さまざまな取り組みがあります。
重要なのは、入社初日に情報をまとめて伝えて終わりにしないことです。
新入社員が実際に働くなかで生まれる疑問や不安にも対応しながら、一定期間にわたって職場への適応を支援していきます。
オンボーディングと混同されやすいものに「新入社員研修」があります。
どちらも新しく入社した従業員を支援するものですが、対象となる範囲や期間に違いがあります。
新入社員研修は、業務に必要な知識やスキル、ビジネスマナーなどを身につけることが主な目的です。
入社後の数日間や数週間など、一定の期間を設けて実施されることが多くあります。
オンボーディングでは、仕事を覚えることだけではなく、
といった、組織への適応を幅広く支援します。
入社直後だけでなく、数か月程度の期間をかけて継続的に行う場合もあります。
つまり、新入社員研修は、オンボーディングを構成する取り組みのひとつと考えると分かりやすいでしょう。
入社後の教育をより長期的な視点で考える場合は、従業員の成長を支える人材育成の取り組みも重要になります。

新しく入社した人は、仕事内容以外にも分からないことが数多くあります。
たとえば、
「誰に質問すればいいのか分からない」
「社内で使われている言葉が分からない」
「自分に何を期待されているのか分からない」
といった状態です。
既存の従業員にとっては当たり前になっていることでも、新入社員にとっては初めて知ることがあります。
その状態で「分からなければ聞いてください」と伝えるだけでは、何が分からないのか自体を整理できないこともあります。
そこで企業側から必要な情報やコミュニケーションの機会を用意し、職場に適応しやすい環境をつくるのがオンボーディングの役割です。
オンボーディングを整えることは、新入社員だけでなく企業側にもメリットがあります。
入社後に「何を、どの順番で覚えるのか」が整理されていれば、新入社員も仕事を理解しやすくなります。
担当者によって教える内容が大きく異なる状態を減らし、必要な知識を段階的に身につけてもらうことができます。
新しい職場では、ちょっとした疑問でも「こんなことを聞いていいのだろうか」と迷うことがあります。
上司との面談や相談役となる従業員を決めておくことで、困ったときに誰へ相談すればよいのか分かりやすくなります。
このような相談しやすい環境を整えることは、従業員にとって働きやすい職場づくりにもつながります。
業務のやり方だけを教えても、「なぜこの仕事をするのか」が分からなければ、仕事全体の意味を捉えにくいことがあります。
会社の事業や経営理念、部署の役割なども共有することで、自分の仕事が組織の中でどのようにつながっているのかを理解しやすくなります。
入社後に「思っていた仕事と違った」「職場になじめない」と感じることが、離職を考えるきっかけになる場合があります。
もちろん、オンボーディングを行えば離職を必ず防げるわけではありません。
しかし、定期的に状況を確認し、困っていることを早めに把握できる環境をつくることは、新入社員の定着を支える取り組みのひとつになります。
では、企業では具体的にどのようなことを行えばよいのでしょうか。
オンボーディングは、入社当日から始めるとは限りません。
入社前に、
などを伝えておけば、新入社員も初日を迎えやすくなります。
企業側もパソコンやアカウント、社員証など、仕事に必要な環境を準備しておきます。
入社後は、会社の事業内容や組織、社内制度、仕事をするうえで必要なルールなどを説明します。
一度に大量の情報を伝えても覚えきれないため、資料や社内マニュアルなど、あとから確認できるものを用意しておくと便利です。
新入社員が「自分は何をすればよいのか」を理解できるようにします。
仕事内容だけでなく、
「最初の1か月で何を覚えるのか」
「どのような状態を目指すのか」
など、短い期間ごとの目標を設定する方法もあります。
仕事について質問しやすくするためには、周囲の人との関係づくりも重要です。
同じ部署のメンバーを紹介したり、関連する部署との顔合わせを行ったりすることで、誰がどの仕事を担当しているのか理解しやすくなります。
直属の上司とは別に、気軽に相談できる従業員を決める方法もあります。
業務上の小さな疑問や職場で困っていることなどを相談できる相手がいることで、新入社員が一人で悩みを抱えることを防ぎやすくなります。
入社1週間後、1か月後、3か月後など、一定のタイミングで状況を確認します。
面談では、
などを確認します。
問題が大きくなってから対応するのではなく、早い段階で状況を把握することが重要です。

オンボーディングを仕組みとして整える場合は、次のような流れで考えます。
まず、「オンボーディングによってどのような状態を目指すのか」を決めます。
たとえば、
などです。
新入社員が仕事を始めるために必要な情報や経験を整理します。
会社について知ること、業務を覚えること、人間関係をつくることなど、複数の視点から考えます。
洗い出した内容をすべて入社初日に行うのではなく、時期ごとに分けます。
たとえば、
入社前
必要な案内や環境準備
初日〜1週間
会社説明、社内ルール、メンバー紹介
1か月程度
基本業務の習得、面談
3か月程度
業務の振り返り、課題の確認
といった形です。
人事だけに任せるのではなく、上司、教育担当者、同僚など、それぞれの役割を決めます。
「誰かが教えてくれるだろう」という状態をなくし、誰が何を担当するのか明確にしておくことが大切です。
オンボーディングを実施したあと、新入社員や担当者から意見を聞きます。
「最初に知りたかった情報は何か」
「分かりにくかったことは何か」
「どの支援が役立ったか」
などを確認し、次の採用時に改善します。

入社直後は、新しい情報が非常に多い時期です。
会社説明、システムの使い方、業務ルールなどを一度に伝えても、すべてを覚えることは難しいでしょう。
必要なタイミングで必要な情報を伝え、あとから確認できる環境を用意することが大切です。
「分からないことがあれば聞いてください」だけでは、質問しにくい人もいます。
企業側から定期的に声をかけたり面談の機会を設けたりして、相談するきっかけをつくります。
経験や職種によって、必要な支援は異なります。
新卒社員と経験豊富な中途採用者では、仕事を覚えるために必要な内容も違います。
基本となる仕組みを用意しつつ、一人ひとりの経験や状況に合わせて調整することも必要です。
入社手続きや会社説明は人事が担当できても、実際の仕事を教えるのは配属先になることが多いでしょう。
人事と現場で情報が共有されていないと、「誰が何を説明するのか」が曖昧になる場合があります。
それぞれの役割を整理し、連携して新入社員を支えることが重要です。
採用活動では、どうしても「入社してもらうこと」に目が向きやすくなります。
しかし、企業と従業員の関係は入社してから始まります。
新しい職場で仕事を覚え、人間関係をつくり、自分の役割を理解するまでには一定の時間が必要です。
その期間を本人の努力だけに任せるのではなく、企業側も必要な支援を用意する。
それがオンボーディングの基本的な考え方です。
大がかりな制度をつくる必要はありません。
入社初日の準備を整える、相談相手を決める、1か月後に面談するなど、できることから仕組みにしていくことが大切です。
オンボーディングとは、新しく入社した従業員が職場や業務に適応し、力を発揮できるように支援する取り組みです。
新入社員研修のように知識やスキルを教えるだけではなく、会社への理解、職場での関係づくり、役割の共有、定期的なフォローなども含まれます。
オンボーディングを整えることで、新入社員が仕事を覚えやすくなり、困ったときに相談しやすい環境づくりにもつながります。
重要なのは、入社時に一度説明して終わりにすることではありません。
入社前から配属後まで段階的に支援し、新しい従業員が組織の一員として働きやすい状態をつくることがオンボーディングの目的です。