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人材育成という言葉はよく使われますが、具体的に何をすればよいのか迷う企業も少なくありません。
新人研修を実施する、先輩社員が仕事を教える、資格取得を支援するなど、人を育てる方法はさまざまです。しかし、研修を実施すること自体が目的になってしまうと、実際の仕事や従業員の成長につながらないこともあります。
人材育成で大切なのは、「どのような人材が必要なのか」を明確にしたうえで、従業員が必要な知識やスキルを身につけられる環境をつくることです。
この記事では、人材育成の基本的な考え方から、企業が取り組む目的、代表的な育成方法、うまくいかない原因、実際の進め方までわかりやすく解説します。
この記事でわかること
人材育成とは、従業員が仕事に必要な知識やスキルを身につけ、能力を発揮できるように企業が支援していく取り組みです。
新人に仕事を教えることだけが人材育成ではありません。
若手社員のスキル向上、中堅社員の専門性強化、管理職のマネジメント能力向上、将来のリーダー育成など、従業員の役割や成長段階によって必要な育成内容は変わります。
また、近年はデジタル技術の進展や事業環境の変化によって、一度身につけた知識だけでは対応できない場面も増えています。
厚生労働省も、企業と労働者を取り巻く環境が変化するなかで、自律的・主体的かつ継続的な「学び・学び直し」が重要だとしています。
そのため、人材育成は「会社が従業員に教える」という一方向の取り組みだけではなく、従業員自身が継続して学べる環境を整えることまで含めて考える必要があります。
人材育成に時間や費用をかけても、すぐに成果が見えるとは限りません。
それでも企業が継続して取り組むのは、人材の成長が組織の力そのものに関係するためです。
新しく入社した従業員が、最初から仕事をすべて理解しているわけではありません。
業務の進め方や社内ルール、商品・サービスに関する知識などを段階的に学ぶことで、一人で担当できる仕事が増えていきます。
既存の従業員についても同様です。担当業務や役割が変われば、新しい知識やスキルが必要になります。
特定の従業員だけが仕事の進め方を知っている状態では、その人が不在になったときに業務が滞る可能性があります。
知識やノウハウを共有し、複数の従業員が対応できるようにすることは、属人化を防ぐうえでも重要です。
人材育成は個人の成長だけでなく、組織として安定して業務を進めるための取り組みでもあります。知識やノウハウの共有は、業務の標準化や業務効率化にもつながります。
企業が成長を続けるためには、現在の業務を担当する人だけでなく、将来の管理職やリーダーを育てていく必要があります。
必要になってから急に管理職候補を探すのではなく、早い段階から経験を積める環境を用意することで、次の世代への引き継ぎを進めやすくなります。
将来を見据えて人材を育てることは、採用だけに頼らない組織づくりにつながり、人手不足への備えという面でも重要です。
「これからどのような仕事を担当できるようになるのか」「どのスキルを身につければよいのか」が分かることは、従業員自身が将来を考えるきっかけになります。
会社が一方的にキャリアを決めるのではなく、本人の希望と企業が必要とする役割をすり合わせながら育成していくことが大切です。

人材育成というと「研修」を思い浮かべるかもしれませんが、方法は一つではありません。
仕事内容や育成する人材によって、複数の方法を組み合わせます。
OJT(On-the-Job Training)は、実際の業務を行いながら必要な知識やスキルを身につける方法です。
上司や先輩社員が仕事を教えながら、実務経験を積んでもらいます。
実際の業務と直接結びついているため、仕事の流れや判断方法を学びやすいことが特徴です。
一方で、指導する人によって教え方や内容に差が生まれやすいため、「先輩社員に任せればよい」と考えないことが重要です。
OFF-JT(Off-the-Job Training)は、通常の業務から離れて研修や講習などを受ける方法です。
社内研修だけでなく、外部セミナーや研修サービスなどを利用することもあります。
日々の仕事だけでは学びにくい基礎知識や専門知識を、体系的に身につけたい場合に向いています。
オンライン上の教材や動画などを利用して学習する方法です。
従業員がそれぞれのペースで進めやすく、複数拠点の従業員に同じ内容を提供しやすいという特徴があります。
ただし、教材を用意するだけでは利用されなくなることもあります。
受講する時間を確保したり、学んだ内容を実務で活用したりする仕組みも必要です。
資格取得、書籍購入、外部講座の受講など、従業員自身が取り組む学習を企業が支援する方法です。
費用補助だけでなく、学習時間を確保する制度なども考えられます。
厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」でも、学習機会や時間の確保、費用面の支援などが取り組みのポイントとして示されています。
上司との定期的な面談も人材育成の一つです。
現在困っていることや今後身につけたいスキルを確認し、次に経験する仕事や学習内容を考えます。
「研修を受けさせる」だけではなく、本人がどのように成長したいのかを確認する機会として活用できます。

制度や研修を用意していても、人材育成が思うように進まないことがあります。
その場合は、研修内容だけではなく、育成の仕組みそのものを確認してみましょう。
「社員のスキルを高めたい」という目標だけでは、何を教えるべきか判断しにくくなります。
まずは、どの部署・役割で、どのような知識や能力が必要なのかを整理することが重要です。
新人が配属された後、「あとは先輩社員に教えてもらう」という状態になっている企業もあります。
これでは担当者によって教える内容が変わったり、忙しい時期には十分な指導ができなくなったりします。
OJTを行う場合でも、教える内容や到達目標をある程度共有しておく必要があります。
研修制度があっても、日常業務が忙しくて参加できなければ活用されません。
「空いた時間に勉強してください」だけでは、業務を優先して学習が後回しになることもあります。
必要に応じて、業務時間の一部を学習に充てられるよう調整することも検討します。
研修で新しい知識を身につけても、仕事で使う機会がなければ定着しにくくなります。
研修後に関連する仕事を担当してもらうなど、「学ぶ → 試す → 振り返る」という流れをつくることが重要です。
研修への参加人数や受講率だけを確認して、人材育成の成果としてしまうケースもあります。
本来確認したいのは、「研修を受けたか」ではなく、「必要な知識やスキルが身につき、仕事に活かせているか」です。
研修後の面談や業務状況なども確認しながら、育成方法を見直していきます。
人材育成は、研修サービスを選ぶところから始めるのではありません。
まず会社として必要な人材と、現在の従業員の状況を整理します。
今後の事業や組織を考え、
「どのような人材が必要なのか」
「どのような知識・スキルが必要なのか」
を整理します。
部署や役職ごとに考えると、必要な能力を整理しやすくなります。
次に、従業員が現在どのような知識・経験を持っているのかを確認します。
必要なスキルと現在のスキルとの差が分かれば、何を育成すべきかが見えてきます。
「○月までに一人でこの業務を担当できるようになる」など、できるだけ具体的な目標を設定します。
目標が明確であれば、本人も何を学べばよいのか理解しやすくなります。
必要な能力に合わせて、OJT、OFF-JT、eラーニング、自己啓発支援などを組み合わせます。
実務スキルならOJT、基礎知識なら研修というように、一つの方法に限定する必要はありません。
学んだ内容を仕事で実践し、その結果を本人と振り返ります。
うまくできたこと、まだ難しいことを確認し、次の育成内容につなげます。
厚生労働省のガイドラインでも、「目標の共有」「学びの機会」「支援」「実践・評価」というプロセスが示されています。

人材育成を一時的な研修イベントで終わらせないためには、従業員が継続して学べる働きやすい職場をつくる必要があります。
厚生労働省が2026年8月に公表した令和7年度「能力開発基本調査」では、計画的なOJTを正社員に実施した事業所は60.6%、OFF-JTを受講した労働者は37.3%でした。一方、能力開発や人材育成について何らかの問題があると回答した事業所は80.1%にのぼります。調査対象は常用労働者30人以上を雇用する企業・事業所などであり、すべての企業をそのまま表す数字ではありませんが、人材育成の難しさを考える参考になります。
研修制度を増やすことだけではなく、
「学ぶ時間を確保できるか」
「上司が成長を支援できているか」
「学んだことを実践できるか」
「成長が評価や仕事につながっているか」
まで考えることが大切です。
また、従業員によって経験や目指すキャリアは異なります。
全員に同じ研修を受けてもらうだけではなく、会社として必要な能力と本人の成長の方向性をすり合わせながら、継続的に育成していくことが求められます。
人材育成とは、従業員が仕事に必要な知識やスキルを身につけ、能力を発揮できるよう支援する取り組みです。
OJTや研修だけでなく、eラーニング、自己啓発支援、1on1などさまざまな方法があります。
重要なのは、研修を実施することそのものを目的にしないことです。
まず自社にどのような人材が必要なのかを明確にし、現在の従業員とのスキル差を確認したうえで、必要な育成方法を選びます。
そして、学んだ内容を仕事で実践し、振り返りながら次の成長につなげていく。
この流れを継続することで、人材育成を単発の研修ではなく、企業と従業員がともに成長する仕組みにしていくことができます。